小説の問題 一覧

小説の問題vol.13 姉小路祐『二重逆転の殺意』

こってりとした大長篇もいいが、たまには味付けのあっさりとした佳作もいいものだ。フルコースのフランス料理ではなく、ついでにすする蕎麦みたいな小説。今回選んだ姉小路祐『二重逆転の殺意』はそんなミステリーである。もっとも舞台は大阪だから、蕎麦というよりうどんか。 姉小路祐。八九年に長篇処女作『真実の合奏』(角川書店)で第九回横溝正史賞佳作を受賞してデ...

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小説の問題vol.12 沢木冬吾『愛こそすべて、と愚か者は言った』

小説の問題vol.12 沢木冬吾『愛こそすべて、と愚か者は言った』

宮部みゆきや高村薫といった実力作家を輩出した日本推理サスペンス大賞が新潮ミステリー倶楽部賞と改まってから三回目の同賞では、受賞作の他に審査員特別賞が二作出て、合計三作が刊行の運びになった。この審査員特別賞というのは受賞を逸した候補作を審査員の権限によって出版するものであり、選ばれた作品に審査員の理想が反映されていて興味深い。 今回、私が最も買う...

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小説の問題VOL.11 佐野洋『内気な拾得者』

小説の問題VOL.11 佐野洋『内気な拾得者』

ミステリーが成立するためにはまず初めに事件の影が必要だが、事件という素材だけを放置しても旨いミステリーに化けるはずがない。そのためにはいかに技巧が必要であるか、ということを学ぶ好教材として、今月は佐野洋の短篇集をお薦めする。『内気な拾得者』は、佐野洋が「オール讀物」誌上で続けている連作の短篇集であり、すでに第一弾として『北東西南推理館』(文藝春秋)が...

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小説の問題VOL.10 北森鴻『花の下にて春死なむ』

小説の問題VOL.10 北森鴻『花の下にて春死なむ』

「安楽椅子探偵」という言葉の意味は、ちょっとしたミステリーマニアならばすぐおわかりになるだろう。事件の模様を聞き、実際現場に赴かずに純粋に思索だけで事の真相をつきとめる探偵のことである。別にそういった探偵の全員が安楽椅子に座っているわけではないのだが、何となく椅子に深々と腰掛けて推理を巡らせている探偵のイメージが「安楽椅子探偵」という言葉に結語したも...

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小説の問題VOL.9 宮部みゆき『クロスファイア』

小説の問題VOL.9 宮部みゆき『クロスファイア』

小説家の本歌取りというのは、決して珍しいことではない。志水辰夫がギャビン・ライアル『深夜プラス1』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を換骨奪胎して傑作『深夜ふたたび』(徳間文庫)を書いた例のように、優れた先達の作品世界の上にどれほどのオリジナルが構築できるか、という試みは創作上一つの重要な実験テーマである。 宮部みゆきがスティーブン・キングのファンであ...

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小説の問題vol.8 和田はつ子『かくし念仏』

小説の問題vol.8 和田はつ子『かくし念仏』

今年の乱歩賞は池井戸潤『果てる底なき』と福井敏晴『Twelve.Y.O』の同時受賞となった。過去三組ある同時受賞の例でも、佐賀潜と戸川昌子など同期同士互いに切磋琢磨しあうことにより作家として大成した例が多く、今後の成長が楽しみな二人なのである。はっきり行って受賞作は未だ発展途上という印象であったが。 ところで、過去の乱歩賞受賞者中最も異彩を放つ...

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小説の問題vol.8 逢坂剛『燃える地の果てに』

小説の問題vol.8 逢坂剛『燃える地の果てに』

テポドン一号が発射され三陸沖洋上に落ちたことが報道されたとき、誰もが脳裏に核戦争の恐怖を思い浮かべたに違いない。あまりに拡散して核の傘自体は見えなくなったが、その脅威は今でも消えたわけではないのだ。 ところで、今から三十年以上も前の一九六六年にスペインで米軍機が事故のため墜落した事件があったことをご存じだろうか?その機内には水爆が積載されていた...

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小説の問題vol.7 多島斗志之『海賊モア船長の遍歴』

小説の問題vol.7 多島斗志之『海賊モア船長の遍歴』

かつて、ファミコン以前の時代においては、家庭で簡単にできる冒険とは読書に他ならなかった。今やTV画面の中で、簡単に勇者たちの冒険を追体験できるとはいえ、所詮は十四インチ分程度の冒険だ。今でも小説の扉を開けば、無限のイメージ世界が待っている。物語の再生産により無数の複製を産み出した結果、もはや読書から新鮮な感動は失われた、そんな風にニヒリズムを決めこむ...

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小説の問題vol.6 香納諒一『幻の女』

小説の問題vol.6 香納諒一『幻の女』

弁護士の栖本には、かつて仕事上の挫折から自暴自棄となり、職も家族も投げ棄ててしまった苦い過去があり、今は漫然と仕事をこなすだけの無気力な日々を送っていた。その栖本がまだ家庭を持っていた頃、妻以外に愛した女がいた。不思議と自分のことを語ることが少なかった女、瞭子。だが彼女はある日突然栖本の前から姿を消した。まるでそれまでの日々を否定するかのようにあっけ...

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小説の問題vol.5 藤木凛『ハーメルンに哭く笛』

小説の問題vol.5 藤木凛『ハーメルンに哭く笛』

浅草・吉原の花魁弁財天の境内にある「触れずの銀杏」には、神隠しの因縁が伝えられていた。昭和九年、早朝。その銀杏の根元で老人の惨殺死体が発見される。奇妙なことに、その老人こそ数十年前同じ場所で神隠しにあった少年の係累に当たる者だった……。 藤木稟の処女長編『陀吉尼の紡ぐ糸』はこんな情景で幕を開ける物語である。昭和初期の軍国主義の時代を時間軸に、そ...

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