過去仕事 一覧

小説の問題vol.24 「信濃の山から生まれ、山に帰る小説」津本陽『真田任侠記』&出久根達郎『紙の爆弾』

険しい山肌に囲まれた摺り鉢の底のような河原。藍碧の空の下、二人の男たちが腰を下ろして会話を交わしている。 誰あろう、信州上田城主真田昌幸の家来、猿飛佐助と霧隠才蔵である。主君昌幸は、今まさに出陣せんというところ。相手は名将徳川家康の軍勢七千余騎。兵数わずか二千の真田勢にとっては一大事である。しかし-- 「徳川の奴輩は平地のはたらきをい...

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小説の問題vol.23 「お父さんとパンジー」志水辰夫『きみ去りしのち』&船戸与一『龍神町龍神十三番地』

小説の問題vol.23 「お父さんとパンジー」志水辰夫『きみ去りしのち』&船戸与一『龍神町龍神十三番地』

今月も新刊と再刊各一冊を採り上げるが、共通項は「お父さんとパンジー」だ。なんだ「パンジー」って?という疑問もあるだろうが、それは最後のお楽しみ。 まず最初、志水辰夫『きみ去りしのち』は九五年に刊行された短編集の文庫化作品。スタンダート・ナンバーで統一された題名が告げるとおり、旧き良き時代への郷愁が全編に漂っている。 表題作の主人公...

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小説の問題vol.22 「三島由紀夫と京極夏彦 昭和と平成の天神」徳岡孝夫『五衰の人』&京極夏彦『百鬼徒然袋 雨』

小説の問題vol.22 「三島由紀夫と京極夏彦 昭和と平成の天神」徳岡孝夫『五衰の人』&京極夏彦『百鬼徒然袋 雨』

「問題小説」に連載していた書評、「ブックステージ」は1年弱経過した時点で増ページとなり、新刊と文庫・新書化作品を一冊ずつ扱う形式に変わった。サブタイトルをつけるようになったのもこのときからだ。 それはいいのだが、増ページということを意識してか、この回は肩に力が入り過ぎてしまっている。恥ずかしいったらありゃしないので欠番にすることも考えた。しかし、若気の...

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芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

芸人本書く派列伝returns vol.20 春風亭一之輔『いちのすけのまくら』

いきなり私事で恐縮だが、二〇一七年十二月一杯で新宿五丁目で営業していたCAFE LIVE WIREは閉店した。といっても姉妹店のHIGH VOLTAGE CAFEというのがすぐそばにあり、トークライブなどはそちらで継続している。昨日も漫画家の田中圭一氏と、『軽井沢シンドローム』のたがみよしひさ氏について語るイベントをやったばかりである。閉店したCAF...

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小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

小説の問題vol.21 藤原伊織『てのひらの闇』

あまり大きな声では言えないが、私も実は昼間会社勤めをしている人間だ。常識よりも社是が優先される会社組織の中で、自我を崩壊させずに生き抜く難しさは、重々承知している。自分を偽るのではなく、第二の自分という人格を作ることが、会社社会を生き抜くための秘訣だろう。藤原伊織『てのひらの闇』は、そうやって懸命に「会社人間としての私」を演じている人にこそ読んでほし...

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小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

小説の問題VOL.20 風野真知雄『鹿鳴館盗撮』

『峠の群像』以来久々の忠臣蔵テーマとなった、今年(注:1999年)のNHK大河ドラマ『元禄繚乱』だが、今一つ盛り上がりに欠ける気がする。来年のテーマが何かは知らないが、個人的に好きな時代は幕末である。中でも司馬遼太郎原作の『花神』などは、中村梅之助の大村益次郎が大好きで、TVドラマ嫌いにしては珍しく毎回観ていた記憶がある。だが、大河ドラマには、幕末テ...

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小説の問題vol.19 井上尚登『T.R.Y.』

小説の問題vol.19 井上尚登『T.R.Y.』

今、書店には何だかとんでもなくおもしろそうな本が平台に山積みになっている。『T.R.Y.』、今年の横溝正史賞受賞作である。なにしろ帯の煽り文句がいい。主人公は「革命という熱病にうなされる怪男児」だ。 この言葉を見ただけでも、正直、おおっと思った。しかも、 「横溝賞史上、最高傑作!」 との折り紙つき(編集者の情熱を感じる)。こ...

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小説の問題vol.18 宮嶋茂樹『空爆されたらサヨウナラ』

小説の問題vol.18 宮嶋茂樹『空爆されたらサヨウナラ』

もうかれこれ三十年以上も私は東京都の住民なのだが、最近になって変わったことがある。都の公報紙「都政だより」にやたらと都知事の顔写真が載るようになったのだ。前任者の青島幸男のころまではそういう慣習はなかったので、これは石原慎太郎の意識的なパフォーマンスなのだろう。私はそれを見るたびに、(失礼ながら)都知事選で敗北した明石康氏のことを思い出してしまうので...

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小説の問題vol.17 白石一郎『航海者』

小説の問題vol.17 白石一郎『航海者』

「一九九九年第七の月」は無事に終わったのだろうか。原稿を書いている時点では「恐怖の大王」どころか、空から降ってくるのは雨ばかりだが。大王を待ってぼんやりしている間に、読書界には大傑作が彗星のごとく降臨してきた。白石一郎の『航海者』である。 われわれの知る日本史像は、ここ十年あまりで大きく様変わりした。特に中世民衆史の風景を変貌させるに多大な貢献...

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小説の問題vol.16 中島らも『さかだち日記』

小説の問題vol.16 中島らも『さかだち日記』

今月はちょっと趣向を変えてエッセイを取り上げたいと思う。中島らもの『さかだち日記』である。 中島らもといえば、おそらく一般的には、『明るい悩み相談室』(朝日文庫)の作者として名高いのではないかと思う。天下の朝日新聞に、「うちの父が全裸で野菜炒めを作るので困ります」といったような、かっ飛んだ相談が載っていたのだから、今にして思えば過激な連載だった...

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