落語会レポート 第593回三越落語会に叔父と甥の共演を聴くため駆けつける

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%e5%86%99%e7%9c%9f-2016-09-30-21-58-02三越落語会第593回の顔付けが発表になった瞬間に、これは絶対に行かなければ後悔する、と決意した。なにしろ先代柳家小さんの高弟である小三治と、その兄弟子・立川談志門下の立川談四楼が出演するのだ(以下も敬称略で)。叔父と甥の共演がこの前に実現したのは、いったいいつだったのだろうか。それ以外の出演者も、小三治の弟子であるはん治以外は、落語芸術協会から瀧川鯉昇、五代目円楽一門会から三遊亭圓橘と、ここ1年で談四楼と共演した落語家ばかりである。これは談四楼による小三治包囲網なのか、などと妄想しながら会場に向かった。

番組はこの通り。

鯛(桂三枝作) はん治

三年目 談四楼

包丁 圓橘

仲入り

蒟蒻問答 鯉昇

出来心 小三治

前座には間に合わず。はん治「鯛」から。最初に「魚が出てくる落語というのはあまりないので、みなさんが『これは鯛なんだ』と意識を集中していただくのが大事で」と断るのが可笑しい。

今年に入ってからはこれが初の生小三治である。自宅最寄りの高田馬場における異臭騒ぎや、新幹線に蛇がいた、という話題で自由に遊びながら(ときどき『あれ、なんの話だったっけ』と微妙な軌道修正が入る)、総体としては本題とまったく関係ないマクラで「出来心」へ。もちろんフルバージョンで、「サイゴベエの表札」や「カツオブシのおじや」などの小三治オリジナルの演出もしっかり。登場人物がみなかわいらしく、個人的には花色木綿の繰り返しをする八五郎が大家に「温かくて風邪を引かない」と囁くような声で念を押すところがつぼに嵌まった。同じようなやりとりの噺なんだけど、機械的な感じがしないのよね。

談四楼「三年目」は安心の演出で、談四楼版は結婚式のマクラと本題の噺を自由に行き来できるのが強みだ。楽しみにしていた圓橘「包丁」は八重一重を口ずさみながら口説く場面がさずがであった。虎んべが弥蔵を組みながら清元の師匠を訪ねるところや、その前の杯のやりとりをしながら悪巧みをするあたりの仕草も雰囲気十分である。

鯉昇「蒟蒻問答」は、八五郎が廃寺の住職になる理由を、もともとが病気で蒟蒻屋に厄介になっていて、そのときに頭の毛が抜けてしまい、生やすよりも抜いたほうが早いから、としている。このやり方、鯉昇オリジナルかどうかは知らないのだけど、「梅毒で抜けてしまって」としないきれい事でいいのではないか。演者によっては登場人物がみんなヤクザみたいになるのだけど、鯉昇演出はそこまでいかず、まっとうな町人の感覚を残したままである。

いいものを聴かせていただきました。この落語会を選んで大正解。

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