街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年9月東海道線で浜松、静岡、沼津

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2018年4月2日の午前3時に前を通りかかったときの太田書店七間町店。やってなかった。あたりまえだけど。

豊橋泊の一夜は特に書くこともないので割愛する。駅前の精文館書店は立派でいいなと思った、ということぐらい。地方に行って地元の大型書店が元気よく営業しているのを見ると、本当にほっとする。残念ながら郷土本でそれほど欲しいものがなかったので何も買えなかったのだけど。

翌月曜は普通の平日で特に差し迫った仕事はなかったので、ゆっくり東海道線に乗って帰ることにした。東海道の街道歩きは今金谷まで来ていて、前回は大井川鐡道に乗ったのだが、今回は青春18きっぷ旅行なのでそれは止めておくことにした。どうせまた金谷には来るのである。

せっかくなので、東海道線の各駅で古本屋に寄って帰ることにした。行ったことがない店や、前回訪問してから何年も経っているところがけっこうある。手始めは豊橋からほど近い浜松駅である。

駅まで行ってみると、東海道線に遅れが生じていることがわかった。全線というわけではなくて、知多半島の武豊線から来る上り列車が台風の影響で遅延しているらしい。実は武豊線には乗ったことがないので、足を伸ばしてみようかという考えもあったのだが、この分だと止めておいてほうがよさそうだ。おとなしく上り列車を待って、浜松まで行くことにした。

東海道線に乗るといつもそうだが、492㎞を歩いたときのことがいつも思い出される。浜名湖の両岸、舞坂宿と新居宿の間は本来徒歩ではなく、船で浜名湖を渡るのである。ここを歩いたのはたしか九月のことで、残暑が厳しくて湖からの照り返しで焦げそうになった。しかし弁天島を経由して湖面を眺めながら歩くのは気持ちのいいものである。次回歩くときもここを通ろうか、それとも磐田の見附宿から姫街道を通って内陸部を行こうか、などと考えているうちに浜松駅に着く。

浜松駅から静岡鉄道で一つ、新浜松駅まで行ったところに典昭堂がある。いや、電車に乗らなくても歩いていける距離なのだが、静鉄に乗ってみたかったのである。

典昭堂の創業は一九三四年というから、たいへんな老舗だ。ここでは神田伯龍・河竹登志夫・関山和夫編『世話講談 黙阿弥物の展開』(三一書房)を買う。世話講談とは白波物などの市中巷談で、修羅場と並ぶそれらの読み物の重要性を改めて説く本だ。六代目神田伯龍の芸談などを中心としたアンソロジーで、読みごたえがある。講談研究のために必要なので迷わず購入した。

棚を見ていると珍客があった。六十代ぐらいの男性で、愛用の辞書がくたびれてしまったので、装幀を直したいのだという。人のよさそうな店主は、最近では辞書をそこまで長く使う人はいませんからね、と苦笑しつつも、うちでできるかどうか、お持ちいただければ見てみましょう、と応えていた。古本屋にそういう用件で来る人をあまり見たことがなかったので、ちょっと微笑ましかったのである。

典昭堂とわたくし。

浜松の次は静岡まで行ってしまう。途中、袋井で古本屋を見かけた気もするのだが、次回の街道歩き時でいいだろう。金谷と島田は前回の東海道で降りている駅である。街道を往来するために何度も来ている東海道線だが、実は藤枝~静岡間の駅にはあまり縁がない。旧街道がここを通っていないからだ。だから、通り過ぎる駅の眺めが少々珍しく感じる。

さすがに県庁所在地だから、静岡駅周辺には多くの古本屋が集まっている。しかし以前の古本屋地図を見ると、今では無くなってしまった店も多く、残念である。ここにはまだ書いていないが、府中宿から藤枝宿まで歩いた際は深夜バスで新宿から静岡駅まで行き、午前三時の夜明け前から歩き始めた。そのとき深夜の街中でたしかに古本屋を一軒見たのである。そこにもぜひ行ってみたい。

静岡駅の北口を出て、静岡鉄道の新静岡駅方面に向かって歩く。鉄道が敷かれる前から発達していた都市にはよくあることだが、JRの線路は街路と直角ではなく、四十五度ぐらい斜めに交わっているので、道を把握するまでに少し時間がかかる。正方形に近い駿府城公園に沿って南西から北東に向って走っている道は北町通という。鷹匠町という地名は、まさに江戸時代はそうした職能の人々が住む場所だったのだろう。ここに栄豊堂書店古書部と水曜文庫という古本屋が道を挟むようにして営業しているのである。

以前に一回だけ来たことがあったので今でもあるのか不安だったが、両店とも健在であった。

ただし、お休みである。

事前にネットで見たら営業日になっていたのだが、もちろんそんな情報などは当てにならない。栄豊堂はしっかり月曜定休と書いてある。まあ、仕方ないであろう。水曜文庫は、後で店内イベントの告知を見つけた。こちらも元気にやっているようである。

北町通を戻っていくと、五差路にぶつかる。北西方面に歩いていけば昔の駿府城大手門前に出るはずだ。その先の浅間通りに老舗のあべの古書店があるはずなのだが、時間がないので今回は見送る。駿府城公園と相対する形であるのが静岡市役所であり、そこから南東に下ると府中宿の札の辻跡に出る。旧東海道はこのあたりでは七間町通りと呼ばれていて、目指す太田書店七間町通り店もその角にある。

整理の行き届いた店で、ジャンルごとに細かく表示が出ている。旧青林堂や格闘技関係のムックなどに気を惹かれるものがあったが、それは買わず。外国文学の棚も眺めただけであった。思わぬ発見があったのは郷土史本の棚で、シェルパ斉藤『213万歩の旅 東海自然歩道1343kmを全部歩いた!』(小学館)を購入することにした。BE-PAL連載を本にしたもので、すでに小学館文庫に入っているのだが、イラストが見やすい元版で持っておきたい。東海自然歩道は内陸に入ったところにあるので、東海道とはあまりかぶっていない。しかし、広義の東海道本であることは間違いないだろう。アウトドア関係のところに置かれることが多い本なので、郷土史棚で見つけたというのも何かのご縁である。

太田書店とわたくし。前回歩いたときは真夜中だった。

ここで散策を切り上げ、再び駅に向かう。そろそろ帰りを気にしなければいけない時刻である。静岡から東には個人営業の古本屋があまり生き残っていないはずで、三島の北山書店は閉業してしまったし、草薙のにし古書倶楽部には前回振られてしまった(このときは気づかなかったが、清水には個人営業の店があるらしい)。専業ではないが、東田子の浦駅前にgrow booksという個性的な書店があって、中に少し古本の棚を置いている。しかしここは少し前に行ってしまったので、わざわざそのためだけに下車するのも面倒なのである。

というわけで、狙いを沼津駅の平松書店一本に絞った。沼津には一週間ほど前に来たばかりで、タクシーで通った際に店が営業していることを確かめたばかりだったのだ。この日の古本屋巡りでは鉄板、のはずであった。

が、しかしやっていない。平松書店へは、沼津駅を出て駅前のアーケードをそのまま歩いていくと、何本目かに交差した道を右に曲がったところにある。数日前に通ったときの記憶通りであったが、ただ店はやっていなかった。店頭の表示を見てもこの日は営業しているはずなのだが、やっていない。あとでSNSで確認してみたところ、しばらく前にお店がずっとやっていなかったことがあり、現在も営業日は一定していないようなのだ。店主もかなりご高齢のはずであり(なにしろ三十年近く前に私は平松書店から本を買っている)、これは文句を言ったら罰が当たるというものであろう。次の機会を楽しみにすることにして、帰途についた。

移動時間はかかったが、入れた店はわずか二軒、買った本も二冊だけである。本の代金を合わせても千円弱にしかならぬ。青春18きっぷがあればこその、贅沢な古本屋巡りなのであった。ありがとう青春18きっぷ。また冬に使わせてもらいます。

閉店中の平松書店とわたくし。月曜定休とは書いてないのだけど、そんなことは言いっこなしだ。

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