街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年1月・中村橋「古書クマゴロウ」

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西武池袋線の中村橋という駅にはあまり縁がなくて、最後に下りたのはまだ勤め人だった二十年以上前のことではないかと思う。「少年チャンピオン」で『探偵ボーズ21休さん』というミステリー漫画の連載が始まることになり、私を含めた何人かにトリックプランナーのお手伝いをする話がまわってきた。その顔合わせということで、中村橋の中華料理屋に集まったのであった。これは別のところでも書いたが、その打ち合わせが終わり、二次会になったときにとんでもないことが起きた。アドバイザーとしてやってきた某氏が企画そのものにけちをつけ始め、編集者が激怒して喧嘩になったのだ。口論ではなくて、あれは完全な喧嘩。横で見ていて「壁村耐三以来の少チャンイズムとはこういうことか」と感心しきりであった。

そんなことはどうでもいいのだが、池袋での仕事までちょっと時間が空いたので、どこかに行ってみようという気分になった。ネットで情報収集するうちに、最初考えていた候補地よりもおもしろいところが見つかった。2018年に、古書クマゴロウという店が中村橋に出来たというのである。おお、いつの間に。古本屋ツアー・インジャパンの小山氏が良い本を安く売ると評価しているのを見て、ここだなと思った。池袋と中村橋ならば一時間半もあれば往復できる。これは呼ばれているのである。

ここしばらくご無沙汰だった雨が降って来て、中村橋駅を出ると傘無しでは厳しい天気になっていた。しかし駅から二分程度ということなので、パーカーのフードをかぶって速足で歩いてしまう。たしかに、線路と斜めに交錯している商店街をまっすぐ歩いてすぐ、道の右側に店があった。

店頭に均一棚がある。特に新書と文庫の充実ぶりが半端ではない。旺文社文庫のあまり見ない本などがごろごろしているし、新書のほうもカッパブックスの珍しい本の背が見えて気分が高まる。間違いなく良い店である。ここで加太こうじ『紙芝居昭和史』(旺文社文庫)、厳谷大四『文壇ものしり帖』(講談社文庫)、銀座百点編『銀座ショートショート』(旺文社文庫)を手に取る。最後の一冊はミニマガジン「銀座百点」に執筆されたものを集めたもので、先般亡くなった横田順彌の〈ふぁん太爺さん〉ものなども入っている。今では読めない作家が多い一冊なので、逆に目新しい。

入ってすぐ右にやはり均一のワゴン、左が小説棚で、その奥に文学棚が続いている。店内は左側が歴史系などの硬い人文科学系、中央が民俗学や古典芸能、芸術系なども含めて最も個人的には関心があるゾーンで、右側に文庫棚。その奥にはSFやハヤカワ・ミステリがまとめて置いてある棚があった。どの本も手に取って見ると値付けが安い。このくらいかな、と思っているよりも決まって下回っているので、時間に余裕があるときだったら間違いなくあれこれ買い込んでいた。危ない危ない。結局上記の三冊だけを買って帰る。

加太こうじ氏の著作は、先日水木しげる関連の本を読んでいたので格好の副読本となる。これはゆっくり読む用。厳谷本は、文壇ゴシップものとしておもしろく、このあと晩酌の肴になった。書かれている事実はいちいち裏を取らないと引用できないのだが、何かを調べるためのとっかかりにはなりそうだ。難しいと感じたのは『銀座ショートショート』で、執筆者は有名どころばかりなので華はあるのだが、独立した短篇として読むと時代がかってしまって正直現在では厳しいものが多かった。銀座という地名に幻想が残っていた時代の一冊なのだなあと中村橋から池袋に向かう電車の中で拾い読みしながら思ったのであった。でもまあ、泡坂妻夫「雨の銀座」が人を食った話で楽しかったからいいのだ。あ、奥野健男の解説も先にざっと読んだが、作家紹介に力があってこれもいい。

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