幽の書評vol.16 三輪チサ『死者はバスに乗って』

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死者はバスに乗って (幽ブックス)

ジャンルを横断する圧巻のデビュー作

ある日街中で、そこにはいないはずのものが見えるという怪事が起き始める。幼稚園の送迎バスだ。バスが見える者は限られているが、高校2年生の対馬奈美はその一人だった。彼女の家では、幼いころに死んだはずの弟・マサヤが帰ってくるという異変も発生していた。県警の交通課に属する刑事・梶原は、バスを見てしまったものが起こした事故の検分に立ち会ったことから一連の出来事を知り、その謎について調べ始める。

三輪チサ『死者はバスに乗って』は、第5回『幽』怪談文学賞長篇部門の大賞受賞作だ。同部門で大賞が出たのは第1回の黒史郎『夜は一緒に散歩しよ』以来、二度目で四年ぶり。三輪は2009年に第1回『幽』怪談実話コンテスト大賞も受賞しており、実話と小説両方の分野に才能があることを証明する結果となった。

幽霊バスの正体は何か。なぜ見える人と見えない人がいるのか。そうした謎によって話を展開させながら、作者は不本意な形でこの世を去らなければならなかった人々や、その遺族の哀しみを重層的に描き出していく。ホラーのみならず青春小説やミステリーといった他ジャンルの力を集結させて一個のエンターテインメントとして成立している作品であり、全体を見れば過剰な部分が散見される。しかし、小ぢんまりとまとまっていないのは、むしろ新人作家としては良いことだ。作風が滑らかに洗練されたときにどのような作品が生み出されるのか。将来に期待したい書き手である。

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