街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2018年3月静岡行・その2 静岡「水曜文庫」ほか

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ひさしぶりに会心の笑みのワタクシ。 古本屋一冊萬字亭にて。

(承前)

前回静岡駅までやってきたのは2018年9月のことであった。

そのときはタイミングが悪く、訊ねる店訪ねる店がみなお休みという体たらく、特に道を挟んで近所にある、水曜文庫と栄豊堂書店古書部の二軒に揃って振られたのは、静岡という街自体に拒まれたようでなんとも縁起が悪く感じた。験かつぎではないのだが、とりあえずはそこから攻めていきたいと思う。

■駿府城の周りをうろうろと

JR静岡駅というよりも静岡鉄道の始発駅である新静岡駅のほうが最寄である。この駅を出て北上すると、駿府城のお堀に沿って北東へと延びている道にすぐ当たる。それを真っ直ぐ行けば道の右側に水曜文庫、左側に栄豊堂書店古書部である。

まずは水曜文庫だ。幸いにして開いている。声をかけて中に入ると、細長い店舗の右真ん中あたりにある帳場から、店主の「いらっしゃい」という応えが飛んできた。入ってすぐ左は芸術系の棚なのだろうか。未整理の本なのか障害物も多く、壁際の棚を見るためには迂回路も通らないといけない。その棚の奥、左側の壁は文庫棚で、ジャンルなどでけっこう細かく整理されている。山田風太郎など個人名でまとめられている作家も多い。

そこから反対側の壁に目を転じると、日本文学単行本の背が見える。棚の上部に貼り紙があり「散逸を避けるため、しばらくアナキスト文学は非売品としまう。どうしてもという方は店主にご相談ください」との文字が。なるほど伊藤野枝全集などの書名が見える。これは一つの見識だろう。その棚に寄って右側の細い通路は国内外の純文学が多く、中央棚の裏側には芸術・芸能系や戦争関連資料などが目立つ。棚と棚の間に積まれた本も多く、崩さないようにそろりそろりと歩いて速足で見終えた。買えば買える本があったのだが、この日は自制を心掛けていたので失礼して手ぶらで外に出る。水曜文庫さんは時折インストアイベントなども開催されているようで、書店文化の形成発展に熱心だ。いずれまた伺う機会もあるだろうと思う。

道を渡って栄豊堂書店古書部へ。噂には聞いていたのだが、店頭棚がおもしろい。均一棚の区切りが悪くて、サッシ戸を閉めると棚の真ん中に来てしまうのである。というかそれは閉まらないのではないか。前面にシャッターを下ろせば問題ないのか。前回来たときはちゃんと閉店、というのも変な言い方だが閉まっていたのだから大丈夫なのであろう。

店内はそれほど大きくなく、入口から見れば凹の字を引っくり返したような古本屋の基本、振り分け形である。向かって右の中央棚にコミックやアニメ系の気になる本がいろいろある。十代のころに持っていた「OUT」のバックナンバーで、アニパロ特集号がかなりあったのには心が揺れ動いた。浪花愛さんやゆうきまさみさんの作品がたくさん載っているやつだ。これからまだいろいろ回らないといけないのに、雑誌は文字通り荷が重い。残念ながら見送ることにした。ここまで三軒回って何も買わず。

■なんとも謙虚な古本屋さん

北東へ延びる道をそのまま歩いていく。堀に沿って歩くと曲がり角があり、今度はやや北西に針路が転じる。それをしばらく行き、右に曲がって行きあたった交差点の左角に、文高堂書店がある。ここは事前に情報があまりなかったので、とりあえず飛び込みのつもりでやってきた。店頭の均一棚は空である。ガラス戸越しに中を覗くと、電気が消えている。奥の帳場の方には灯りが点いているようなのだが、店舗は無人のようだ。戸に手をかけてみると開いたので、中に顔を入れて何度か声をかけてみた。返事はない。しばらくそのままでいたのだが、営業中かどうかもわからないのに許可なく入るのはよくないだろうと判断、写真を撮って引き返すことにする。また坊主である。

ここからはある理由により時間との勝負になる。少々気も焦ってきた。

さっきの道を戻って、新静岡方面に引き返さず、そのまま南下する。しばらく行くとJRの線路を越えて駅の南側に出た。久能街道という名前のついた道で、正確には静岡駅ではなくて、静岡鉄道のいずれかの駅が最寄になるのではあるまいか。数百メートル下ったところの道の右側、やや奥まったところにその店はあった。古本屋一冊萬字亭、店の正面と左側に小規模な均一棚があり、そこにあくまでも目立たないように看板が掛けてあった。横に出してある「少林寺拳法案内所」の文字のほうがはるかに大きい。声をかけて中に入ると、返事があって、女性が出てきて帳場に座った。

店内は小説や実用書などが多く、それほど専門性は感じられないのだが、雑本の中に思わぬ珍しいものが混じっているので遊弋の楽しみは多い。いきなり八甲田山の陸軍遭難に関する自費出版書があったりして。そろそろ何か買いたい、と思っていたら文庫の棚に結城昌治『公園には誰もいない』の古い講談社文庫版が。持っている本だが、未読の人に薦めるつもりでこれを戴く。わずか100円なのに丁重にお礼を言われたので恐縮しつつ店を出た。そこで気になり、ちゃんと均一棚を見直すと、双葉社版の藤原審爾『よるべなき男の仕事・殺し』が。新宿警察シリーズの長篇が収められた作品集である。これは置いていけない。急いで取って返し、100円をお支払いして購入した。5軒目にしてようやく2冊である。

(つづく)

文高堂書店。また来る。

慎み深い一冊萬字亭の看板。少林寺拳法のほうが主なのだろうか。

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