街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年4月・須賀川市円谷英二ミュージアムと古書ふみくら

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先日、不届き者によって角が折られてしまったらしいエレキング像。そんなことをするやつはピット星人にお仕置きされてしまえ。

私も子供も特撮が好きで、ウルトラシリーズにはさらなる感情を抱いている。

もちろん今のニュージェネレーションズも好きだ。毎回観ていて映画も劇場まで行っているけど、今年のR/Bは良かったな。TVシリーズ終了後の登場人物たちがどういう人生を送っていくかを描いて、本当の完全版になっていた。意味のある劇場版だったと思う。

というわけで私には課題ができていたのである。

須賀川市に行くことだ。

同市は特撮の神様と呼ばれる円谷英二が生まれた場所だ。昨年末、その市街内に円谷英二ミュージアムなる施設ができたという報道があった。しかも須賀川市が、M78星雲光の国と姉妹都市になったというのである。市の公式サイトの中から、すかがわ市M78光の国成る場所に住民登録できるサービスまで始まっていた。それって福島県なのかM78星雲なのかどっちなんだと思うけど、まあどっちでもいいではないか。とりあえず登録してみた。

ところが問題があって、登録をしたのはいいけれども、肝腎の住民票を受け取るためには実際に須賀川市に行かないと駄目なのである。しかも土日は市役所が休みだから、平日の窓口が開いている時間しか不可であるという。おお、それなら金曜日に行くしかないじゃないか、わが子よ、ああ、そうだねえ、というようなやりとりがあり、一路東北本線の人になったのであった。

須賀川市まで東京からは、黒磯駅と新白河駅の乗り換えを含めて約5時間かかる。正月に仙台まで行っているので、すでにおなじみのコースであるが、子供は初めてだ。やはり前回と同じように宇都宮で一旦降りて、朝から餃子定食である。1月とはまた違った新緑の光景を楽しみながら5時間、さしたる苦労もなく須賀川駅に到着した。駅にはさっそくウルトラマンのお出迎えがある。すかさずスマートフォンのカメラを構える父子であった。

駅を出て、まず観光案内所のようなところで地図を入手することにした。くだんの住民票はこの場所で発行してもらえるらしい。後で知ったが、市役所は市街のかなり奥まった場所にあるので、正解だろう。ネットで登録した際にもらった住民番号を告げて、紙の住民票を発行してもらう。

住民票の図柄は10種類あり、有料だが頼めば何枚でも出力してもらえる。一回の申請につき一つ、クリアファイルをくれるのも嬉しい。とりあえず目的の一つはここで無事に終わらせられたので、地図をもらって元気に市街を目指す。円谷英二ミュージアムがあるのは松明通りにある市民交流センターtetteの中である。その道すがら、ウルトラマンや怪獣のFRPフィギュアを観賞できるのだ。地図にはその場所が書いてあり、二人ともコンプリートする気満々である。

住民票。本籍が「大切な人の心の中」というのがいいね。

駅からは一旦坂を下り、また上ったところから松明通りが始まる。おお、たしかに出てくる出てくる。新シリーズでは息子が活躍するらしいタロウに始まり、ゼロに続いてまた孫ができてしまったウルトラの母、エースと光の国のウルトラマンたちが登場する。

「おお、エースがテレビ準拠で短足だねえ」

「あ、本当だ。でも、フィギュアにしたときに見栄えを考えてか、若干テレビよりも足が長いような気が」

「その辺の気配りが憎いじゃないか」

などと話しながら歩いていく。見るとフィギュアだけではなく、街灯にもシルエットで怪獣が書かれている。いや、怪獣だけではなくてメカもあるのか。マットアローなども書かれている。道の両側に並んでいて、どうも規則性があるようなのだが。

若干実物よりも足が長い気がするのだが、どうだろう。

「このアギラは明らかに書き起こしだけど、オープニングのシルエットから持ってきたようなやつもあるね」

「メトロン星人はトレースだったし」

「メトロンの隣はメフィラス星人か。これ、どういう選択なんだろうね。さっきなんかミラクル星人だったぞ。どうしてあんなマイナー星人を」

「きっと、他にミが思いつかなかったんじゃ」

「どういうこと」

「たぶんこれ、五十音順になってる。通りの向こうはアから始まって、こっちはワで終わる」

「なるほど。よく気が付いたな。だからマットアローとか、やたらとマットものが多かったのか。いやしかし、ミラクル星人は素直にミクラスでよかったんじゃないのか」

「だよねー」

などと須賀川市の謎を解きながら歩いていくのである。子供も行っていたが、この街灯のシルエット、カードにして売り出したら強力なお土産になる気がする。カルタでもいい。須賀川市観光課はぜひ考えるように。

ミラクル星人。なぜ君なのか。

空いていた喫茶店で簡単に昼食を済まし、いよいよ円谷英二ミュージアムである。図書館なども入っている総合施設の一画だと聞いていたので過度な期待はしないようにしていたが、なかなかどうして立派な展示施設であった。おそらく図書館と協同して、円谷英二の功績や思想の背景になる書籍を一緒に置いている。レプリカやフィギュアに関心を持ってくれた人があとからそれらの本を手に取ってくれるようになれば、さらに空想の域も広がるというものではないか。

ミュージアムは無料なのに、とてもお得な映像上映がある。14分の「夢の挑戦、ゴジラ須賀川に現る」で、酒井ゆうじ氏監修の、初代ゴジラ再現スーツを使って撮影されたものだという。また、その奥には撮影に使われた実物大のホライゾン(背景画)も飾られており、職人技の筆致を至近距離で鑑賞することができる。これだけで片道5時間かけて須賀川までやってきた甲斐があるというものだ。

一階にいたバルタン星人。さすがの造形美。

 施設を出て、すぐ近くのウルトラマンショップSHOT M78大束屋商店へ。ここは喫茶店もやっておられる、円谷英二ご親族のお店なのだ。店内には円谷公式グッズがたくさん売られており、その奥には英二ゆかりの記念展示もある。店のすぐ裏に円谷英二生誕の碑があり、そこも巡回する。奥に円谷印刷という会社が見えたが、あれもご親族なのか、それともこのへんには円谷姓が多いのだろうか。 もうそろそろ松明通りもおしまいで、この先にある市役所でウルトラの父像を訪ねたらフィギュア巡りも完了なのだが、その前に行くべき場所がある。須賀川市の名店、古書ふみくらだ。福島県まで来ておいて、寄らずに帰れるわけがないではないか。

古本市などでは何度も名前をお見掛けしていた古書ふみくらだが、実際に訪れるのは初めてである。店頭には均一棚などは出ておらず、サッシ戸を開けて入ると、書棚でできた四列の通路がある。どの棚も天井際まで本があり、脚立を借りて一番上まで丹念に見て歩く。右から二番目の通路で、性科学関連の本にいいものがあり、少々悩んだが結局置く。もしかすると家にあるかもしれない本なのである。また、清水一行の本がやたらとあるのに目を惹かれた。エッセイのたぐいは、もしかするとこの先そうそうお目にかかることがないかもしれない。これも結構悩んだ末に買わず。どうもこのところ蔵書を増やすことに臆病になっており、以前のように軽快に買うことができないのである。だったら古本屋に行くなという話もあるが、そういうご意見もありますねえ、ということで拝聴しておく。

しばらく拝見して、失礼する。印象としてはいわき市で入った阿武隈書房に似て、あれをもう少し庶民的にしたお店という印象だった。奥には版画などもあるようで、店主が点検しておられた。実力をつけて、もう一度お訪ねしたいと思います。

市役所前で素敵な玩具屋があったので中に入る。昭和で時が止まったような店内なのだが、入口すぐのショーウィンドウにタミヤニュースが創刊号から何年分か揃いで置いてある。おおっ、と興奮する私を子供が訝し気に見ているので、これはねえ、と説明する。お店は案外奥行きがあるので進んでみると、そこにはなんとレーシングカーのサーキットが作られているのであった。今は電気も点けられない店の奥で密かに佇んでいるだけだが、往事はきっとラジコン者たちが熱い闘いを繰り広げたに違いない。

お店は駄菓子屋も兼ねていたので失礼にならない程度にいくつか商品を買い、おやじさんに話を聞いてみた。タミヤニュースはやはり定期的に目をつける人がいるらしくて、売ってくれないかと言ってくるそうだ。

「でもねえ、売っちゃうと、もう手には入らないですからねえ」

そうです。マニアの甘言に負けずにお店の宝として守り続けてください。

お店を出て、さっきの古書ふみくらがあった交差点まで戻る。

「あのね。今日泊まるところは温泉なんですけど、健康センターに個室がついた、という程度の施設なので、ご飯は特に期待しないでもらいたいのですよ。で、たぶん周囲に店はありません」

「店、ないのかあ」

「で、ご飯を食べるのには二つ選択肢があります。その健康センターの食堂か、もしくはこの須賀川市内でたいへん人気のある焼鳥屋で、〆に焼きそばを食べるといいというお店が間もなく開くので、そこで食べてから行くか」

「後のほうで。というか、最初からそっちにする気でしょう」

「焼きそばがあるしねえ」

くだんの焼鳥屋というのは、交差点に面した、というかその会話を交わしていた場所の背後にある、焼鳥とり峰であった。焼鳥や焼きそばもいいが、元祖とりもも揚げが店の一推しであり、さっぱりかりっと揚がっていて子供にも好評であった、という情報を書いて、この稿は続くのである。

とり峰の焼きそば。簡にして要を得ている。

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