街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年6月・神楽坂サイクルと御茶ノ水ソラシティ古本市

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 ひさしぶりに用ができて新潮社にお邪魔した。この前にきたのは四月の「寸志滑稽噺百席」のときだから、もう一ヶ月以上経っている。ご存じない方のために書いておくと、これは落語立川流の二ツ目、立川寸志さんが開いている落語会で、一人で滑稽噺を百席積み上げ、それが終わることには真打になっていようという野望の下に企画されたのだ。会の手配その他を私がお手伝いしていて、現在は地下鉄神楽坂駅そばの香音里という会場で偶数月開催している。次回は6月19日なので、よかったらお越しください。

それはさておき、新潮社で用事が終わって外に出てみると、午後四時をまわっていた。いつもの寸志さんの会は、午後八時開演ということもあって、もう少し神楽坂に来るのが遅い。まだ日の高いうちならあそこがやっているだろう、と思って商店街の坂を上ってみた。

地下鉄の二番出口と一番の間に、神楽坂サイクルという自転車屋がある。ここは、店頭になぜか古本を入れた箱が出ていて、一冊百円とか二百円均一で売っているのである。おそらくは店主が読み終わった本をそうやって出しているのではないだろうか。覗いてみると、よいものがあった。宮脇俊三選のアンソロジー『鉄道が好き』(日本ペンクラブ編)である。集英社文庫が出していたアンソロジーシリーズと表紙は似ているが、内容は異なる。鉄道の出てくる小説ではなく、鉄道好きがその偏愛について書いた文章を集めた本だからだ。たとえば内田百閒の『阿房列車』に登場するヒマラヤ山系こと平山三郎が同文庫に寄せた解説が入っていたりする。この本、おもしろいんだよな、集英社は再刊しないかな、などと思いながら店主にお金を払った。百円は安いと思う。

ここから道を渡り、脇に入ってしばらく行ったところに古本と雑貨のクラシコ書店があるのだが、閉まっていた。定休日ではなかったので、何かご事情があったか。店頭に、店の前で写真撮影をしないでください、迷惑しています云々の掲示があったので、撮影は慎む。

神楽坂を下りていき、総武線で二つ先のお茶の水駅まで行く。ここから駿河台を下っていけば神保町だが、行かないのである。聖橋口から交差点を渡って左斜め前のビル下、中庭にソラマチシティという広場がある。この日からそこで古本市が開かれているのだ。

下りてみると平日ながらけっこうな人出であった。広場をぐるり取り囲んだ露店を見て歩く。なつかしや小田原のおほりばた古書店などの名前があったので非神保町の業者だけかと思いきや、アットワンダーなども出店しているのでそうでもないらしい。太平洋戦争関係の資料が置いてある平台がなかなか興味深く、そこでいちばん悩んだ。

結局買ったのはクレイグ・クレヴェンジャー『曲芸師のハンドブック』(ヴィレッジブックス)と中沢正『考証東海遊侠伝』(雄山閣出版)、カトリーヌ・アルレー『黄金の檻』ハドリー・チェイス『ダブル・ショック』(ともに創元推理文庫)である。後ろの二つはダブり上等の念のため買い。

『曲芸師のハンドブック』は内容がよくわからないのだが見過ごすには帯が魅力的すぎる。「何だ、この小説は?!」「曲芸師流仰天のラスト!」と編集者(たぶん)が煽れば、推薦者も「神に誓っていうけど、ここ5年で最高の小説だ。少なくとも5年、もしかすると10年来の小説かもしれない」(チャック・パラニューク)、「ここ何年ものあいだで、もっとも面白い作家のひとり。万人に読まれて当然の1冊」(アーヴィン・ウェルシュ)とくれば、もう読まずには措けまい。おお、読むぞ、ウェルシュ。

実はこの本、2007年に夭折した三川基好氏の遺訳本でもあったらしい。盟友であった田口俊樹氏が解説の筆を執られている。その末尾を引用したい。

本書は昨年十月九日盛岡にて永眠した三川基好の遺訳である。私事ながら、三川は同業者というだけでなく、私にとっては中学校以来の無二の親友だった。そうした関係で、本人としては心残りであったであろう本書の初校チェックを引き受け、非力をも顧ず、解説も書かせてもらった。改めて三川の冥福を祈る。

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