街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年12月・沼津「weekend books」「マンガや」、片浜「書肆ハニカム堂」

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というわけで、行ってきます。

某月某日

すっかり出遅れてしまったが、年末なので恒例の青春18きっぷによる小旅行に出かけなければならない。今回は年始に大阪行きが決まっている。そこで一日か二日は使うものと考えても、二〇一九年もあと十日を残すばかりの押し迫った時期になって、五日もの遠出が許されるものか。ならやめれば、という声が聞こえたような気がする。いや、行くのだ。

前日は東京都渋谷区のシブゲキ!で実験落語neoのお手伝いという仕事が夜入っていた。実験落語の創始者である三遊亭円丈と林家ひこ市の対談コーナーの司会という大役である。子供のころから聴いていた大看板なのだからもちろん緊張する。なんとか役目をこなして帰宅し、予定通り午前中から車上の人になる。目指す駅は三島である。横浜から二時間半ほどで到着した。

三島駅から沼津駅に向かうバスに乗る。事前の調べではN14系統というバスだったはずなのだが、行ったばかりである。見るとN5というバスでもいいようで、それが今まさに出発するところだった。慌てて乗り込み、三十分ほど。黄瀬川というのが目指す停留所だ。「えー、黄瀬川さんぇ」のあの黄瀬川である。

下車すると、停留所のすぐそばに古本が捨ててあった。これは何かのサインなのだろうか。後続の者に、近くに古本屋あり、みたいに教えるための。

バス停から道を渡り、真っ直ぐに入っていくと、やがて左側に目的の店が見えてくる。静岡の残り少ない未訪店の一つ、weekend booksだ。「週末の本屋」なのだけど、土日しかやっていないというわけではなくて、木・金がお休みだ。これまでなかなか日程が合わずに、来れずにいたのであった。

事前情報通り、非常に趣味のいい造りで、店頭のウィンドウだけ見ると古本屋とは思えない。中に入ると手芸品などが品よくならべられた店内で、結構な広さがある。突き当りの壁一面が古本棚なのだった。棚は右側から児童書、海外文学、国内文学、趣味の本という並びか。内装にふさわしく、落ち着いた感じの品揃えだ。値付けは妥当な感じで、都内でいうと目白の貝の小鳥に近い。ベネッセがまだ福武書店といっていたころに出た、ルース・レンデル『ハートストーン』が手頃な値段であったので、買うことにする。たぶんダブりだけど。ああ、この本は古屋美登里さんの訳だったのか。

外に出て停留所に戻り、沼津行きのバスに乗る。ここからはもう沼津のほうが近いのである。JRの駅としては御殿場線の大岡が近いのだが、運行本数が少ないからこうしてバスに乗った方が早い。沼津で下り、相変わらず熱心な聖地巡礼者がいるラブライブ!のショップ前を過ぎ、東海道線と並行に今来た三島方面に歩く。ぶつかった信号を渡ってその先の道を入ったところに、もう一つの沼津の未訪店、マンガやがあるはずだ。

営業時間を調べて行ったにもかかわらず前回はお店がやっていなかった。古本屋ではよくあることである。今回は、おお、開いている。これは上首尾、沼津の店はすべてこれで回り切った。

店内はざっくり言って前半分がコミック、後ろが成年向けである。その棚の上に雑本が並べられている。こういうところに何か紛れ込んでいるかもしれない、と思って丹念に見たが、残念ながら買えるものはなかった。店内のテレビでは、ローカルバスの旅で太川陽介がマドンナに叱られている場面が流れている。それを楽し気に見ている店主にお礼を言って外に出た。買えなかったのは残念だが、長年の宿題を解決できて気分は晴れやかである。

まだ時間が余っている。静岡には未訪店があと三つあるのだが、二つは浜松にあって今からだと日帰りで行くのは少し難しい。もう一軒は着いたときには閉店している時刻だ。しかし、これだけで引き返すのはもったいない。まだ一冊しか本を買ってないのだもの。思案の結果、週末だけ営業の書肆ハニカム堂を再訪することにした。沼津駅のお隣、片浜が最寄りである。一度行っているので気軽に足を延ばせる。

約半年ぶりのハニカム堂は、店頭に置いてあった均一箱が中に入れられたくらいで、大きな変わりはなかった。店内は右にコミック、左に文庫・新書の棚で、中央にはサブカルチャー系の新刊が置かれ、それに面した通路際には音楽系、奥には民俗・歴史学系の専門書が並べられている。音楽系の棚でミニコミ誌「点線面」のバックナンバーを発見、見れば昨日お会いしたばかりの三遊亭円丈さんが足立区についてのロングインタビューに答えている。これは買うべしという天のお告げであろう。文庫棚から小沢昭一が自分の半生について語った名エッセイ『あたく史外伝』と、ちょっと訳ありで探していた結城昌治『幻の殺意』を手に取る。さっきのレンデルと合わせて一日四冊、まあ、品のいいお買い物である。

店主が出してくれたコーヒーを飲みながら少し世間話。中央棚の新刊は昔東田子の浦駅にあって、今は無店舗の書店になったgrow booksさんの選書であるとか。その中に講談師・神田茜の短篇集『母のあしおと』が置いてあったので聞くと、装画を担当された江頭路子さんが三島にお住まいなので、そのご縁なのだそうだ。江頭さんは三島市内でえほんやさんという絵本専門店を開いておられるという。ああ、確かにそういえば、東海道を歩いたときに道の北側にそれらしきお店があったような。生憎中には入っていなかったので、次の機会にはぜひとも訊ねてみようと思う。

片浜から東海道線上りに乗る。18きっぷの小旅行、一日目おしまい。

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