街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2019年12月・新宿御苑「ギャラリー/書肆 蒼穹舎」

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某月某日

亡父の墓が新宿一丁目にある。もともとは北海道の余市出身なのだが、死ぬにあたって故郷に葬られることを嫌がった。寒いところはさんざん住んだから都会にしてくれ、というのである。その言い分はもっともなので、今のところになった。近いのでちょくちょく墓参りに行けて息子としては助かる。

その日も墓参りを済ませて、近くにある某出版社に立ち寄った。そこの編集Yさんと、ひそかに進めている企画があるのだ。電話をかけてちょっと寄らせてもらい、現状確認の打ち合わせを十五分ほどする。

ここの編集部はなぜか地下にある。隔離されているのだろうか。地上に出ると夕闇が迫りつつあった。まっすぐ帰ってもいいのだが、ちょっとだけ日没までは時間がある。ぶらぶらと歩いていたら自然に古本屋のほうに足が向かっていた。

新宿一、二丁目付近には現在BOOKOFFが一軒あるきりだが、かつては複数の古本屋があった。有名なのは新宿通り沿いの昭友社で、刺青写真集が並べられた店頭のガラスケースに迫力があった。ここは数年前に閉店したが、花園通り沿いにもう一軒、名前を失念した古本屋があったのである。今は中華料理屋になってしまった店の前で、ここで大陸書房の本とかいっぱい買ったなあ、などと往時に思いを馳せながらしばし佇む。

古本屋ツアー・イン・ジャパンさんの情報で知ったのだが、実は今でも古本を扱っている店はある。新宿通りを渡り、新宿御苑の正門間近のビル3階に店舗を構えるギャラリー/書肆蒼穹舎がそれだ。

階段を上がって覗くとそこはギャラリーになっており、折しも風景写真の展示が行われていた。間違えた、と思って退却してはいけないのであって、その奥の帳場にしか見えない戸口を入ると、写真集の売り場になっている。厖大に積まれた写真集の山の向こうに見える奥の壁は一面が本棚になっており、そこが古本売り場なのだ。じっくり展示を拝見してから、中に入った。帳場の中にいる店主はカメラマンの同業と思われる男性と、なにやら世間話をしている。

近寄ってみると、幻想文学や日本近代小説などを中心とした品ぞろえで、専門店に負けない濃い棚ができている。眼福である。古本でもよかったのだが、この日はもっと欲しいものが見つかった。尾上太一『島を愛す』(響文社)だ。副題に「桃岩荘/わが青春のユースホステル」とあるとおり、北海道・礼文島のユースホステルを撮影した写真集なのだ。やった、ユースホステル本だ。

お金を払って外に出る。この近くに、古本屋ではないが地方出版物やミニコミ誌などを中心に扱う模索舎がある。ついでに寄っていこうとしたのだが、店の前まで来たとき、中から男性が出ていくのが見えた。店主である。見れば扉に、ちょっと出かけてきますという札が。タッチの差で惜しいことをしたと思いつつ、特に粘らず帰宅することにした。

昭和の風情を残したユースホステルの写真を懐かしく眺めながら電車で帰る。礼文島のユースホステル、夏になったら行ってみたい。

ビルの入口はこんな感じ。

上の記事とは関係ないのだけど。元プロレスラー・二瓶組長が店主を務めるマジックバーが曙橋近くにあった。自分でもマジックをするらしい。

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