街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 2020年3月豊橋にて『東海道でしょう!』の思い出

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東海道74番目、下地一里塚にて。

某月某日

コロナウイルス騒ぎでうっかり失念してしまっていたが、当然この三月にも青春18きっぷは発行されていたのだった。三月のとある日に切符を購入し、横浜駅から東海道線に乗った。目指すは豊橋駅である。しばらく行けずに放置していた、東海道歩きを復活させるためだ。

横浜5:48発沼津行~7:21三島着

三島7:29発静岡行~8:28静岡着

静岡8:30発浜松行~9:41浜松着

浜松9:43発大垣行~10:41豊橋着

すでにおなじみになっているこの乗り継ぎで行くと、待ち時間が少なくて済むし、三島、静岡、浜松とすべて始発が待っているのである。熱海の乗り換えがないので、ホームを移らなくていいしね。久しぶりの豊橋駅に着くと、すでに四月半ばくらいの暖かい陽気だった。Tシャツ一枚でもいいくらいだ。マスクをして、歩き始める。

東海道35番目の宿場である吉田宿の本陣前が前回の終点だった。そこからまた始める。現在この場所は、丸よという鰻屋になっている。豊橋の人の忘年会などによく使われる店だそうだ。

市街地を抜け、地名の由来になっている豊橋で豊川を渡ると、後は基本的に一本道になる。変化が乏しい道なので、途中に現れる下地、伊奈という二つの一里塚が観光の頼りである。それぞれ日本橋から74、75番目の一里塚である。ということはこのへんで、300kmが過ぎたことになる。東海道492㎞、五分の三に到達した計算だ。

真っ直ぐな道をひたすら歩いていると、豊川放水路の手前で巨大な豊橋魚市場が見えてくる。その少し前から急に店舗が増えてきて、景色の雰囲気が変わるのでそれとわかるのである。市場の門前付近にほどよく古びた町中華があり、店の外にもテーブルがあって、ビールで一杯やっているお客がいた。まだ午前中である。いいなあ、と思うも、ここで飲んだら絶対に先に進めなくなる。

はっ、と記憶が蘇った。

「ビールいいよねえ」

「でも、ここで飲んだら絶対歩けなくなるね」

「ものすごく残念ですけど、行きましょう」

「ううう、ビール飲みたい」

という会話を前にも交わしたよね、ここで。藤田香織さんと、幻冬舎編集さんとの間で。

そうだ、『東海道でしょう!』の企画で最初に歩いた2012年のことだ。あのときは新居宿~吉田宿の行程で嵐に見舞われ、そのせいで一行に不穏な空気が流れてしまったため、しばらく歩くのを休んで冷却期間を置きましょうという話になったのだった。数ヶ月後に復活してまた豊橋から歩き始めた。そのときもまだ少しぎこちない感じだったのが、この町中華の前でそんな会話になって、なんとなく決裂前の感覚が戻ってきた感じがしたのだった。

思えば、豊橋からここに来るまでの道のりでも、なんとなく記憶が薄かった。それはたぶん、いささか緊張しながら歩いていたからではあるまいか。お互いの顏を見ずにぼんやりと歩いていたので、つまらないことばかり覚えている。たとえば、そういう季節だったのか、道でやたらと女郎蜘蛛の巣を見かけた、というような。

豊川放水路を渡れば、やがてJR飯田線の小坂井駅が見えてくる。そこはもう愛知県第二の市町村である豊川市だ。その先に秋葉書店という成人向けの本とかDVDを専門に売っている店がある。

「この秋葉って、秋葉原のことかな。エロ=秋葉原というイメージなのは東京の人間として勘弁してもらいたいねえ」

「こっちの店だから、秋葉神社の秋葉かもしれないけどけどね」

ああ、したした、そういう会話。

ぼんやりと思い出しているうちに東海道36番目、御油宿が近づいてくる。(つづく)

こちらは伊奈一里塚。

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