杉江松恋不善閑居 自粛生活44日目「何を決め手にして本を買いますか」

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庭は猫の縄張りなので、人間は勝手に外に出られない。

5月21日

本に関するアンケート、今回のお題は「本を買うときの決め手は何か」だった。回答数は241だが、いつもよりもコメントが多めだったように思う。みなさん、それぞれ一家言があるのだな。

「装幀など、全体の印象が気に入るかどうかで判断する」22.8%

「表紙裏などの内容紹介や帯惹句を見て判断する」31.5%

「実際に本文を試し読みしてみて判断する」26.6%

「著者によるあとがきや解説などの追加情報で判断する」19.1%

票数は割れた。これは選びにくかったかもしれない。私だって、本によってそれぞれ選ぶ理由は違うことがある。たとえば最近でジャケ買いしたのは、大仁田厚『人生で必要なことは、電流爆破が教えてくれた』だった。これは狡いと思う。堀井憲一郎『『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ、逆だ。』と同じくらい狡い。

1番目はいわゆるジャケ買いである。ぱっと見て、あ、出会った、と思って買っちゃうということか。タカラ~ム@Takashiro Sanoさん「どれも当てはまるのですが、本屋さんの店頭だとやはり装幀などの印象で手に取るケースが多いですね」、春生カンナさん「いろんなケースはありますが、装丁にはかなり影響されているようです。本の雰囲気、は重要です」ほか。黒太さん「新刊・古本、贔屓の作家・未知の作家を問わず、装丁・帯・内容紹介・本文・後書・解説は見ません、買う前に本は開きません。決め手は書名です。あとは強いて言えば、全体から何となく立ち昇るオーラ(雰囲気)でしょうか。田所博士曰く、「大事なモノは、直感とインスピレーションだ!」派ですね 笑」のように、あえて事前情報は遮蔽するという方もいる。

最も多かったのが内容紹介や帯惹句を参考にするというご回答だが、帯は騙されたことがあって信じないという声もあった。さもありなん。私は褒めすぎになるのが嫌なので、いくつかの語句を帯推薦文では使わないというルールを守っている。以前、某同業者が勝手に「号泣」という文字を付け加えられて「いや、そりゃ小説を読んで泣くことはあるけど、これじゃあ泣かないでしょう」とぼやいていたのを見たので、「号泣」は絶対駄目。かえるちゃんさん「ジャケ買いもします。とにかく手に取るのはパッと見た時の印象です。けれど、冒頭で引き込まれないと買わない事も多いです。帯に本文が少しでも書いてあると、嫌になります。そこで出会うはずだったのに!という感じです。なので、あまり帯はキチンと見ないようにしています」。ああ、でも本文が引用してあるとサンプルとして参考になるときもあるかもしれない。特に描写などを引用してくれると、私はありがたい。

以前、慶應塾生新聞から取材を受けたとき、記者の方からまったく情報がない著者や作品を内容紹介で選ぶにはどうしたらいいか、と聞かれたことがあった。その部分は記事になってなくて雑談で話したのだが、表紙裏の内容紹介を下三分の一から半分を隠して読んで、それでも面白そうと思えたら買ってもいいかも、とお答えしたのであった。理由は二つあって、内容紹介はあらすじの要点を頭から書くのだけど、下手な編集者は筆が走って、ネタばらしになることがあるためである。自分がおもしろいと感じた展開のところまで書きたくなっちゃうのだ。でも、ミステリーでいえば多めに言っても全体の1/3よりも後で起きたことは書かないか、曖昧にぼかしたほうが私は読者の興を削がなくていいと思う。もう一つは、もっと下手な編集者だとあらすじを書くだけだと作品の魅力を表現できないような気がするらしくて、余計な文言を後半に差し込んでくるからである。「〇〇を読んで一緒にほんわかしませんか」とか言われると、するもんか、と私は反発したくなるのだけど、一緒にほんわかしたくなっちゃう人もいるので別にそれはそれでいい。

話が逸れた。内容紹介や帯を参考にするというご意見、masirokifujiさん「まず惹句と表紙裏の内容紹介、既知の作家ならそこで決めますが未知ならパラパラと文章を拾い読みした印象、最後に有るならば解説を読んでみて。日本の作家さんの本の場合は解説がない場合があるのでないと逡巡する時があります。最近の表紙の漫画風イラストには少々抵抗ありやめることもw」他からいただいた。

3番目が次点である。「本文試し読み」派。やはり中身をちょっと見てみないと。さんがつさん「装丁なども決め手になったりしますが、まず、一行目の言葉の使い方、リズム、に惹かれて買うことが多いです」、sunbutaさん「既刊を持っている著者でなく、レビューなどをネットや新聞で読んだ場合を除き、初見で本屋で気になった本はさらっと最初と真ん中あたりの文体を流し読みしてから購入します。内容もさることながら、文体が受け付けなくて読み進められなく本もあるのでそのチェックをしてからです」、ぎすけ@メタル酔いさん「ミステリとかは、周りからオススメされたり、作家や翻訳家さんで買うこともありますが、ビジネス書や実用書などは、まず本屋に行って中身をざっと見て、内容が自分の知りたいことであれば買います」。いずれも納得。翻訳ものだと昔は「何を言っているかよくわからない文章」がよくあり、ぺらぺらとめくって、うわあ、これを読まなくちゃならんのか、と戦慄することがよくあった。まあ、それでも他に訳があるわけじゃないんで買うんだけど。最近は本当に翻訳が良くなって、そういうことはほとんどないのである。

最後がいちばん少ない回答だが、解説やあとがきを参考にしている方が思ったより多いのだな、という印象である。自分で書く仕事もしている身としては、解説は商品の一部だと思っているので、サンプルとして読んでいただけるのはたいへんに嬉しい。アリアンロッドさん「今回は悩んだのですが、まずは内容ありきです。それに付け加えて、参考文献、解説、あとがきが付いていればさらに購入意欲は高まります。私は特に歴史小説や研究書や法律関係の書籍をと読むことが多いので、史料(資料、参考文献)が記載されていりことは購入意欲に影響が大きい」のご意見にはまったく同感で、さらに洋書で言えば、索引がついているとぐんと購入意欲が跳ねあがる。邦訳されるときにこの索引が省かれることがあるので、たいへんに残念なのである。索引と、小説の場合は人物紹介もできれば入れておいていただけると嬉しいな。

自粛生活44日目。

数日前は真夏日だったのに、ここのところ冷え込みがきつくて、ついに暖房を入れてしまった。私の仕事場は本の荷重を受けとめるため、コンクリートの土台の上に直接床が置いてあるので、足元が寒いのである。気温が下がったせいなのか、庭に出るガラス戸の前にずっと猫がいた。前日の晩にも同じ場所で丸まっているのを見た。あまりにも動かないのでもしかしたら死んでいるのではないかと心配になって、一分ほど凝視してしまったほどである。生きていた。その後もまったく動くことなく、午後一杯を同じ場所で過ごされた。くつろいでいただけたのであれば何よりである。

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