街てくてく~古本屋と銭湯、ときどきビール 代々木上原「ロスパペロテス」と東家一太郎「夕立勘五郎

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東家三可子さん、東家一太郎さん、東家美さん。

某月某日

浪曲師・東家一太郎さんと曲師・東家美さんは、現在唯一の夫婦で相三味線という演者だ。そのお二人が師匠の二代目・東家浦太郎の十八番であり、一門のお家芸でもある「夕立勘五郎」の連続読みに挑戦すると聞いて、一も二もなく通し券を申し込んだ。新型コロナ・ウイルスの影響もあって人数制限が行われているが、なんとか予約が通った。この日が初日である。

開催されるのは「赤坂で浪曲」という小規模の会である。最寄り駅は地下鉄千代田線の赤坂なのだが、自宅から早めに出て向かったら、なぜか千代田線は千代田線でも反対方向の代々木上原、古本屋のロスパペロテスに着いてしまった。なぜだろう、なぜかしら、と首を傾げつつ店内を探索する。コロナ禍以降では初めての来店だが、懐かしい本の背が目に入る。そうか、まだ売れずにいてくれたか。

と、半地下になっている店の奥で珍しいものを発見した。『朝鮮観光』、発行者を見ると朝鮮民主主義人民共和国国家観光総局とある。ビニールに包まれているので中は見られないのだが、これはたぶん北朝鮮刊行のためのガイドブックだろう。どんなプロパガンダが書かれているのか知らないが、今買わないと絶対に後悔する。だって、北朝鮮に行かないと買えない本なんだもの。値段はちょっと高めだったが、迷わず購入する。

そこから千代田線で十分少々で赤坂駅に着く。会場はすでにコロナ仕様の満員であった。十分に喚起や人同士の距離に気を付けつつ開演の運びとなる。前講は一門は違うが同じ東家の三可子さん。

「円蔵恋慕唄」東家三可子・東家美

「夕立勘五郎 世直し初暦」東家一太郎・東家美

「夕立勘五郎 花屋金兵衛の衷心」東家一太郎・東家美

夕立勘五郎とは人入れ稼業の稲葉屋勘五郎のあだなで、松平出羽守の愛馬・夕立が暴れて人を傷つけそうになっているのを殴り殺したところからこの異名がある。このエピソードは一太郎さんによれば浪曲版には出てこないとのこと。「世直し初暦」は勘五郎が町人に無体を働く御家人を懲らしめ、それが縁となって旗本の若隠居・大庭佐四郎と義兄弟の契りを結ぶまで。「花屋金兵衛の衷心」は同業者の花屋金兵衛が馬鹿息子の若殿から満座の中で勘五郎を辱めよと言い含められ、先代への御恩ゆえに断れず、新年会の席において盃を投げつけて額を割る。許してくれよと心で詫びながら暴力を振るわざるをえない金兵衛の内面描写と、それを知ってか事を荒立てずに引き下がる勘五郎の男ぶりが聞かせどころだ。こちらの話では、一件を聞きつけたやはり同業者のサンバラ辰が立腹し、おのれ金兵衛め、と行動する「サンバラ辰の駆けつけ」の予告が入ってお開きとなった。サンバラとは「人の三倍腹が立つ」の由。一太郎さんによれば森の石松と並ぶ浪曲らしいおもしろい人物ということなので、次回が実に楽しみである。

あまり聴く機会のない侠客伝だが、夕立勘五郎は男惚れがする人物で、それに惹かれて大庭佐四郎やサンバラ辰が仲間になっていくのだという。まるで『ワンピース』のような熱い展開で、きっと若い人にも受けるだろうなと思った。最後に記念撮影の時間があり、おしまい。私はここから用があり、都内某所へと馳せ参じた。

これが噂の『朝鮮観光』。

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