杉江松恋不善閑居 浅草木馬亭十月公演三日目・元町中華街「カフェ関帝廟」

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存

某月某日

木馬亭の十月公演は三日目。土曜日で人出が多いことは予想されたが、今日も今日とて浅草へ。案の定、かなりの大入りであった。

馬子唄しぐれ 東家三可子・伊丹英幸

宮本武蔵 一乗寺下り松の決闘 天中軒景友・沢村美舟

幡随院長兵衛 桜川と黒鷲 東家孝太郎・伊丹秀敏

甚五郎旅日記 小田原の猫餅 玉川奈々福・沢村まみ

仲入り

慶安太平記 吉田の焼き討ち 木村勝千代・沢村美舟

爆裂お玉 三悪党の出会い 神田昌味

亀甲組木辻 港家小柳丸・沢村美舟

耳なし芳一 東家三楽・伊丹秀敏

本日いちばんの収穫は「耳なし芳一」で、三楽さんによればかけたのは五年ぶりということであった。平家亡霊の台詞にエコーをかけて不気味さを醸し出していく。PAで操作していると思われ、楽屋との連携が必要な様子である。クライマックスの鬼火から平知盛が出てくるあたりは圧巻で、明かりを暗くして演じられたらかなり怖いだろうと思った。

この日は前半が、関東の関西節・関西の(中京だが)関西節、関西節を取り入れた関東節、純粋な関東節と並ぶ。ところが奈々福さんが登場するなり「今日は月に一度のまみちゃんの日。最後に関西節を入れるのでがんばってもらう」と宣言。沢村豊子さんの三番弟子であるまみさんは、月に二回ある奈々福さんの高座で、一回は演目を決めて弾くことになっているのだ。けっこうな一席であったが、バラシが関西節であったかどうかは聴いていて今一つ自信がない。このへんがにわか浪曲ファンの哀しさで、ベテランの聴き手ならきちんとわかるのだろうけど。もっと精進します。

前半のうち男性二人演者は宮本武蔵と幡随院長兵衛で立ち回りの多い派手な読み物である。「一乗寺下り松の決闘」は25分バージョンで聴くのは初めて。剣戟が始まる前の導入部が意外に長く、武蔵の人物紹介編になっている。「桜川と黒鷲」は前半に相撲、後半に剣戟という構成になっている。雷雨の入谷田圃での闘いには迫力があった。最初の「馬子唄しぐれ」は最初を数分聴き逃しているので曲師がわからず。秀敏さんに似ているがそれよりも全体的に湿って重い感じがする、と首をひねっていたが、後で伊丹英幸さんだとわかった。これはだいたい合っていた。

仲入りを挟んで玉川VS木村という構図で、本日は曲師の沢村美舟さん要望らしく、「吉田の焼き討ち」である。旅情緒のある読み物を、ということだったが半年前に豊橋に行ったばかりなので画像が鮮明に蘇る。吉田は第二次世界大戦の空襲でも焼かれているし、大火災に苦しめられた宿場なのだ。泊り客を逃がした廉で宿の主はお役人に責め殺されるに違いない、と無節操に騒ぐ番頭のキャラクターがいい。「亀甲組木辻」は工事資金のため身売りをした女房おはまが辛酸を舐める話で、国本はる乃さんは「おはまの身請け」として演じるが、そこまで行かずに番頭によって木に吊るされ責められるところまで。責め絵のような陰惨な味があって、これはこれでいい。

講談の「爆裂お玉」には、最後青龍刀権次と思しき人物が出てきてちょっと驚かされる。明治の天一坊ねたということなので、ぜひ続きを聴いてみたいものである。帰りの電車の中で三木のり一・戸田学『何はなくとも三木のり平』を読んでいたら、ちょうど「おれは天一坊」のくだりで、偶然の符丁であった。

京浜東北線で石川町の駅まで。中華街で家族の会食なのである。あまり時間がなかったが、横濱バザール三階のカフェ関帝廟へ。関帝廟書店として中国関連書籍を売っているお店である。中に入ってお茶を飲めばたくさん本棚を拝めるが、そこまで時間がないのでとりあえず店頭の均一棚のみをさっと見る。宮脇俊三『旅の終わりは個室寝台車』が安かったのでもらうことにする。次に出た旅先で読もう。

スポンサーリンク

Share

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Evernoteに保存Evernoteに保存
スポンサーリンク