杉江松恋不善閑居 京山幸枝若十一月独演会

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某月某日

定席初日が終わって、そのまま木馬亭の前で待つ。大阪から京山幸枝若がやってくるのだ。七月以来の幸枝若なので、楽しみで仕方ない。待つ間、定席の出番を終えた浪曲師・曲師のみなさんが次々に向かいの君塚食堂に入って行かれるのを見送る。真山隼人さんはなぜかTシャツ一枚だ。寒くないのだろうか。

ほどなく開場時間になり、定席のときと同じ場所に座る。七月のときはコロナ禍の只中ということもあって少し寂しい入りだったのだが、本日は状況の許す範囲でほぼ満員となる。みなさん幸枝若を待っていたのね。

千人坊主 前編 京山幸太・一風亭初月

千人坊主 後編 京山幸枝若・一風亭初月

仲入り

破れ太鼓 京山幸枝若・一風亭初月

本日の目玉は左甚五郎伝の「千人坊主」の師弟続け読みである。甚五郎二十五歳の逸話で、後見の大久保彦左衛門が千代田城お時計の間で、島津公と無茶な賭けをしてしまう。五寸四方の板に千人の坊主を彫るという細工を百日の間に甚五郎が彫れるかどうかというのだ。しかし甚五郎は師にその細工を禁じられていた。過去に二人の名人が、千人まであと一人というところでどうしても最後の坊主が彫れず、失意のうちに命を絶ったり失踪したりしてしまっていたというのである。この経緯が語られるのが前半、果たして甚五郎も九百九十九人で手が止まるが、残りの一人が彫れていない細工を持って彦佐が島津公の屋敷に駆けていってしまう、というのが後半になる。この読み物は東京でもやる人があって、港家小柳丸さんがかけているのを聴いたが、三十分でほぼクライマックスまで行っていた。五十分の長さがかかるのはなぜか、と興味を持って聞いていたが、そこはさすが幸枝若、途中のくすぐりたっぷりで、ふくよかに話を彩る。甚五郎は無事に千人坊主を彫れたかいな、と彦佐が思い惑いながら道を歩く場面だけで数分。そこがなければもっと早く結末までいけるではないか、というのは野暮で、こうした場面が楽しいのである。

後半の「破れ太鼓」は紀州五十五万石で身分卑しい足軽組頭であった菅音也が、無法者・荒鷲組を討って出世を果たすという物語。人から阿呆よ昼行灯よと蔑まれる男が実は実力者であった、という話の構造は「尾張の大八」とも共通する。人を食ったような音也のキャラクターが幸枝若にぴったり。これまた堪能した。

終演後はMさん、Оさん、Tさんと反省会。浪曲談義をいろいろお聞きして帰る。また明日木馬亭だ。

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