杉江の読書 一覧

杉江の読書 『ムーミン谷の仲間たち』(講談社青い鳥文庫)

 前作『ムーミン谷の冬』をムーミントロールによる他者の発見の物語だったとすれば、『ムーミン谷の仲間たち』はその他者を描くことに主眼のある作品だ。1962年に発表された本書はシリーズ唯一の短篇集である。原題は「目に見えない子と、そのほかの物語」で、表題作の主人公はニンニという少女だ。彼女はおばに育てられていたが、あまりにひどいことをたびたび言われたために、姿が...

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杉江の読書 『ムーミン谷の冬』(講談社青い鳥文庫)

杉江の読書 『ムーミン谷の冬』(講談社青い鳥文庫)

 トーヴェ・ヤンソンが1957年に発表した『ムーミン谷の冬』は、ムーミントロールと世界との対話を描いた作品である。ムーミンたちは通常、十一月から四月までを冬眠して過ごす。コミックス『ムーミン谷のクリスマス』のように一家が揃って冬眠しそこなう話もあるのだが、本書ではムーミントロールだけが目覚めてしまう。そして春まで一人で過ごすことになるのだ。 すべてが初...

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杉江の読書 『ムーミン谷の夏まつり』(講談社青い鳥文庫)

杉江の読書 『ムーミン谷の夏まつり』(講談社青い鳥文庫)

 トーヴェ・ヤンソンは素晴らしい喜劇作家でもある。その才能を如何なく発揮したのが、1954年に発表した第四作『ムーミン谷の夏まつり』だ。最高のコメディエンヌ、ちびのミイの初登場作でもある。 本書で再びムーミン谷は水害に見舞われる。とはいえ『小さなトロールと大きな洪水』のそれほど深刻なものではなく、家が水没してもムーミントロールの一家は普段と変わらない生...

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杉江の読書 『たのしいムーミン一家』(講談社青い鳥文庫)

杉江の読書 『たのしいムーミン一家』(講談社青い鳥文庫)

 嵐が去った後の空のような小説である。 1948年に発表された『たのしいムーミン一家』は、暗い影のあった前二作とは打って変わった陽気な作品だ。作者のトーヴェ・ヤンソンは、少女時代には夏の期間をペッリンゲの島々で過ごした。その幸せな記憶が、ムーミントロールたちの姿に重ねられているのである。 作品の核となるのは、冬眠から目覚めたムーミントロールたちが...

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杉江の読書 『ムーミン谷の彗星』(講談社青い鳥文庫)

杉江の読書 『ムーミン谷の彗星』(講談社青い鳥文庫)

 世界の終わりが近づいてくる。ムーミントロールとスニフは長い旅の果てに異変の原因が彗星の接近にあることをつきとめる。そして、道中で出会ったスナフキンやスノークの兄妹、偏屈なヘムルといった面々と一緒にムーミン谷を目指すのである。彗星衝突の瞬間をパパやママと一緒に過ごし、そして生き延びるために。 トーヴェ・ヤンソン『ムーミン谷の彗星』はレギュラーメンバーの...

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杉江の読書 『小さなトロールと大きな洪水』(講談社青い鳥文庫)

杉江の読書 『小さなトロールと大きな洪水』(講談社青い鳥文庫)

 1939年、世界が戦争に向けて進みつつあった冬、25歳のトーヴェ・ヤンソンは閉塞感の中で行きづまる。彼女には、諷刺誌「ガルム」に寄稿する際、絵の片隅に署名代わりのように描いていたキャラクターがあった。それを自身の不安感を代弁するような世界の中に投げ込み、行動させる。ムーミン・シリーズの最初の作品、『小さなトロールと大きな洪水』はそうした試みの結果として生ま...

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杉江の読書 天龍源一郎・嶋田まき代・嶋田紋奈『革命終焉』(辰巳出版)

杉江の読書 天龍源一郎・嶋田まき代・嶋田紋奈『革命終焉』(辰巳出版)

 2017年の元旦から寝込むことになり、家族に迷惑をかけてしまった。ほとんど眠って過ごしたのだが、眼が覚めている間に読むものがないのも淋しく、『革命終焉』を枕元に置いていた。2015年の旧刊であり、発売になってすぐ買って読んだ本だ。著者は天龍源一郎・嶋田まき代・嶋田紋奈、希代の名レスラーが家族と一緒になって著した、一風変わった半生記である。 以前に天龍...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー5位 青山文平『半席』(新潮社)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー5位 青山文平『半席』(新潮社)

※『半席』が新潮文庫に入りました。解説はミステリー書評家の川出正樹氏です。 青山文平『半席』は、ミステリーとしても秀逸、という同業者の言葉を聞いて手に取った作品である。すでに直木賞受賞作『つまをめとらば』などの諸作でその実力の程はよく知っていたが、その折紙を貰わなければ読み逃していたかもしれない。一読して納得、たしかに良作だった。武家社...

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bookaholic認定2016年度国内ミステリー次点 七河迦南『わたしの隣の王国』(新潮社)

bookaholic認定2016年度国内ミステリー次点 七河迦南『わたしの隣の王国』(新潮社)

 七河迦南の四年ぶりの新刊、『わたしの隣の王国』のページを繰っていくと、まず登場人物紹介の数の多さに驚かされる。だがそれも当然で、〈ハッピーファンタジア〉という夢の国(言うまでもなく千葉県浦安市にあるアレを模している)が主舞台になるため、その世界における主要なキャラクターたちの名前を紹介する必要があるのだ。それが三分の一、残りの三分の二の登場人物は、二人の主...

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杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー10位 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』(講談社)

杉江の読書 bookaholic認定2016年度国内ミステリー10位 宮内悠介『彼女がエスパーだったころ』(講談社)

 宮内悠介の連作短篇集『彼女がエスパーだったころ』には三つの特徴がある。 一つは異端とされているものにあえて光を当てる行為だ。たとえば表題作は、ドキュメンタリー作家・森達也がスプーン曲げで一世を風靡した清田益章を取材した『職業欄はエスパー』(角川書店)から想が採られている。〈超能力者〉として世間の好奇心を刺激しまくる存在となった及川千晴という女性が登場...

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