杉江の読書 一覧

杉江の読書 京極夏彦『虚実妖怪百物語 序』(角川書店)

 京極夏彦は近世と近現代がいかに連続していて、いかに断絶しているかを明らかにしようとしている作家だ。近世文学の再現や柳田國男『遠野物語』の整理と再構成などの仕事に作家としての意図は明らかであるが、水木しげる研究こそはその根幹をなすものである。水木という欠片を嵌め込むことで、いかに近世と現代とが接続しうるかを京極は示した。 10月22日から3週間連続で序...

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杉江の読書 大崎梢『よっつ屋根の下』(光文社)

杉江の読書 大崎梢『よっつ屋根の下』(光文社)

 大崎梢『よっつ屋根の下』は、家族の小説であり、家族の時間の小説である。 東京都の閑静な住宅街である白金で、平山家の四人は穏やかに暮らしていた。その日々が突然終わりを迎えたのである。平山滋は千葉県銚子市への転勤を命じられる。明らかな左遷である。それは妻である華奈にとっては受け入れられないことだった。長男の史彰、長女の麻莉香には私立校受験の準備もさせてい...

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杉江の読書 『窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿1』(猪俣美江子訳/創元推理文庫)

杉江の読書 『窓辺の老人 キャンピオン氏の事件簿1』(猪俣美江子訳/創元推理文庫)

 マージェリー・アリンガムの創造した名探偵譚をまとめた作品集〈キャンピオン氏の事件簿〉、第一弾は2014年に刊行された『窓辺の老人』である。本書に初期短篇、第二弾の『幻の屋敷』に中後期といった具合に、ほぼ発表年順に作品は配置されている。巻頭の「ボーダーライン事件」は、江戸川乱歩が『世界短篇傑作集3』に採ったことでも知られる傑作で、改めて読むとその鮮やかさに惚...

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杉江の読書 『幻の屋敷 キャンピオン氏の事件簿2』(猪俣美江子訳/創元推理文庫)

杉江の読書 『幻の屋敷 キャンピオン氏の事件簿2』(猪俣美江子訳/創元推理文庫)

 アルバート・キャンピオンは38歳にもなって従順な学童のようにかしこまっていた。齢80近いシャーロット大伯母から押しつけられた調査が進展せず、怠けず動け、と叱責されたのである。彼女が屋敷を2週間留守にした後で帰宅してみると、何者かが侵入した痕跡があったのだという。すべてを気のせいとして片づけたいキャンピオンであったが、見逃せない証拠があった。絶対にこの家のも...

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杉江の読書 岡本和明『小せんとおとき』(角川書店)

杉江の読書 岡本和明『小せんとおとき』(角川書店)

「あたしゃねえ、はなしを卸す問屋だよ。三銭でおろしてあげるから、お前さんたちは、そいつを五銭で売るように勉強するんだよ。モトは取れるから……」(古今亭志ん生『びんぼう自慢』)  初代柳家小せんは1883(明治16)年生まれ。父もやはり落語家で、四代目七昇亭花山文から二代目三遊亭萬橘を襲名した。小せんは二ツ目時代に第一次落語研究会に登用されるなど早くから...

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杉江の読書 カーリン・フォッスム『晴れた日の森に死す』(成川裕子訳/創元推理文庫)

杉江の読書 カーリン・フォッスム『晴れた日の森に死す』(成川裕子訳/創元推理文庫)

 森の家で一人暮らしをしていた老婦人が殺されたという。 通報を受けた警察官は現場に急行し、左の眼窩に鍬の刃が突き刺さった、無残なハルディス・ホーンの死体を発見した。通報者である少年は、現場近くでエリケ・ヨルマ・ピヨテルを目撃したという。エリケは奇矯な言動で知られ、付近の住人に恐れられていた人物だった。事件を担当するはずのコンラッド・セイエル警部...

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杉江の読書 早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー』(光文社)

杉江の読書 早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー』(光文社)

表紙を見て、あ、島風、と思ったが違いました。ウサギである。 早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー』は、第50回メフィスト賞を獲得した『○○○○○○○○殺人事件』(講談社)でデビューを飾って以降、さまざまな奇手によって読者を驚かせてきた作者の最新作だ。題名が示す通り『不思議の国のアリス』がモチーフとして使われている。同作はミステリーとも相性がよく、国産の作...

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杉江の読書 アンドレ・ド・ロルド『ロルドの恐怖劇場』(平岡敦訳/ちくま文庫)

杉江の読書 アンドレ・ド・ロルド『ロルドの恐怖劇場』(平岡敦訳/ちくま文庫)

机の上はきちんと整理整頓されている。置かれているのは、劇薬入りのビーカーに、メスや剪刀。しかし、安定が悪い。机の脚がぐらぐらしているのだ。ちょっときっかけを与えるだけで、それらは動き出す。机の前に座るあなたを目がけ、降り注いでくるだろう。 アンドレ・ド・ロルド『ロルドの恐怖劇場』はまさしくそうした小説集である。20世紀初頭のパリでは凄惨と言うしかない恐...

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杉江の読書 松井今朝子『料理通異聞』(幻冬舎)

杉江の読書 松井今朝子『料理通異聞』(幻冬舎)

 五感のすべてが、おいしい、おいしい、と喜んでいる。 松井今朝子『料理通異聞』を読んだからだ。ふうん、料理の時代小説ね、と軽い気持ちで手に取ったら止まらなくなって一気に読了してしまったのである。 物語は天明2(1872)年に始まる。主人公の善四郎は浅草新鳥越町に暖簾を出している、福田屋という料理屋の長男だ。福田屋の前身は八百屋で、今でも精進料理を...

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杉江の読書 今柊二『餃子バンザイ!』(本の雑誌社)

杉江の読書 今柊二『餃子バンザイ!』(本の雑誌社)

 餃子食いには二種類いる。違いは、餃子をおかずとしてご飯を食べるか否かである。定食評論家の今柊二は、実家が「ご飯食べない派」だったため長らく餃子をおかずにすることができなかったそうだ。実家の慣例が後の習慣に影響を与えるのも餃子という食べ物の特徴だろう。私も家で餃子を包んで食べた体験があまりに幸せだったため、今でもその大きさのものを好む。一口サイズや、ジャンボ...

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