杉江の読書 『つげ義春全集3』(筑摩書房)

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%e3%81%a4%e3%81%92%e7%be%a9%e6%98%a5%e5%85%a8%e9%9b%86%ef%bc%931960年代初頭の白土三平ブームを私は直接体験していないのだが、後追いの多さを見れば影響の大きさは察せられる。つげ義春もまた白土の模倣を要請された作家の一人だった。『つげ義春全集3』(現・『つげ義春コレクション3 鬼面石/一刀両断』ちくま文庫)には、前巻と同じ1960年代前半、すなわち貸本漫画界の終焉期に作者が手がけた時代劇漫画5篇が収録されている。画風はいずれも白土色が強く、人物の立ち姿などの要素にわかりやすく影響が現れている。

物語の内容で如実であるのは、権力者の気まぐれや邪心を持つ者の妨害によって翻弄され、残酷な最期を迎えるという内容のものが多いことだ。「鬼面石」は中巣の十万という下人を主人公とした作品で、冒頭で既に彼は、無実であるのに投獄されている。「常人とかけ離れた」醜い顔の持ち主であるがゆえに「女、子供に恐怖心をいだかせる」というのがその理由なのである。十万が虐待されるさまが淡々と描かれ、何の救いもなく終話する。当時の時代劇漫画の残酷趣味を反映した内容だが、悲惨な運命が訪れる原因が「醜い」という一点であるところが、事の理不尽さを強調している。醜形恐怖の裏返しとして読むことも可能だ。

「一刀両断」は据物斬を究めんとする浪人を主人公にした話で「竹光殺法」と「通り雨」の二部構成になっている。偶然に頼った話の構成には無理があるが、残酷趣味だけではなく貧困労苦の中に透徹した明るさを感じさせる内容でもあり、読後感は悪くない。5篇の作品から思想的な裏付けを読み取ることは難しく、その意味で借り物のような印象がつきまとう。むしろ、世の中に受け入れらずにいる者が放つ怨嗟の念を、不遇な主人公の姿に仮託して描いたものとして読むべき作品なのだろう。1962年から63年にかけて、つげには断筆期間があり、画業を放棄して別の職業に従事していた。

巻頭の「盲刃」には「噂の武士」と同様、宮本武蔵が登場する。機械仕掛けの神のように武蔵が降臨して物語を終わらせる、奇妙な余韻を残す作品だ。

(800字書評)

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tanakasugie

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