杉江松恋不善閑居 「加藤シゲアキさんのこと」20170721

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みなさんは人間の声にぶん殴られたことはあるだろうか。私はある。

2014年3月23日のことである。

その日は加藤シゲアキさんが3作目の著書である『Burn.―バーン―』の刊行記念イベントに出演されるということで、私はその対談相手として呼ばれていた。加藤さんの小説はデビュー作である『ピンクとグレー』をかなり早期の段階で読んで、書評もしていた。そのご縁があって呼ばれたのだろう。

会場は東京・表参道のアイビーホール青学会館である。控室で加藤さんと担当編集者の3人で話す時間が30分ほどあった。その間、小説家としてはこの後どんな風にしていくのか、というような話をした。忙しいと思うけどあまり間を空けないで書いてくださいね、とお願いした記憶がある。芸能人が小説を書くのはそんなに珍しいことではない。ただ、書き続けるのは難しいのだ。

時間がきて、会場に向かった。加藤さんが先に立ち、楽屋からステージに続く扉を開ける。

その瞬間である。

轟、という衝撃に全身を包まれた。一瞬耳が聞こえなくなる。声の渦に圧倒されたのだ。私は立ちすくんでしまったのだが、加藤さんは平気な顔ですたすたと歩いていった。なるほど、さすがである。

トークの模様は文庫新刊『Burn.―バーン―』の巻末に収録されているので、そちらをご覧いただきたい。ほぼノーカットのはずだ。

終演後、加藤さんに挨拶をして帰ろうとしたら、編集者から言われた。これから加藤さんが移動するので、午後〇時〇分ぐらい(忘れた)まではSNSなどで、どこでイベントがあった、というようなことは書かないでほしいと。

聞けばこのイベントは、ファンクラブを通じて参加者を募ったもので、希望者は抽選だったのだという。当然ながら参加したくてもできなかったファンもいる。なるほど、それだと現在進行形で加藤さんがここにいる、という情報は流せないわけである。人気者はたいへんだ。

翌朝のワイドショーなどでもこのイベントの映像は流され、観た人から「突如杉江さんが移りこんで飲んでいたお茶を噴いた」という声が多数寄せられた。

後日、加藤さんからは編集者を通じて丁寧な礼状をいただいた。いつも思うのだが、ジャニーズ事務所の方は非常に礼儀正しい。これまでインタビューでお会いしたことがあるのは、岡田准一さんと大野智さんだが、対談相手を務めたのは加藤さんが初めてである。『Burn.―バーン―』のあとに短篇集『傘をもたない蟻たちは』が出ているが、そろそろまた長篇も書いてもらいたい。今度は芸能界と無関係な話が読んでみたいな。

7月25日発売開始だそうです。

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