書評 一覧

幽の書評VOL.11 高橋克彦『たまゆらり』

途切れた記憶が思わぬ魔を呼びよせる 高速で空中を動き回る、黒い玉がある。ビデオ映像などに写りこんだ謎の物体は、たまゆらと名づけられた。〈私〉は、その正体を解明したいという思いに駆り立てられるのだが――。 『たまゆらり』は、不思議現象に取りつかれた男を描く標題作をはじめ、全十一篇を収めた短篇集だ。収録作のうち六篇が年間傑作選のアンソロジーに採られて...

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幽の書評vol.10 東雅夫編『文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船』

幽の書評vol.10 東雅夫編『文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船』

作中の出来事よりも作者の眼差しの方に恐怖する。残酷な運命を描かずにいられない小川未明とは 小川未明は、怖い。何が怖いといって、作者の眼差しが怖いのである。未明は自らの創造した作中人物に、残酷極まりない運命を与えようとする。 本書収録作の「越後の冬」がいい例だ。こういう話である。上越後の山中に、母と二人で暮らす太吉という少年がいた。ある雪の日、太吉...

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幽の書評vol.9 若竹七海『バベル島』

幽の書評vol.9 若竹七海『バベル島』

〈あやし〉のグラデーションが読者を魅了する。読者を思わぬ方向へと連れ去る恐怖小説集 ――梅の樹は生きているもののごとく、多量の樹液をほとばしらせて、どうと倒れた。 若竹七海の最新短篇集『バベル島』の劈頭に収められた「のぞき梅」は、ある旧家の庭に立っていた白梅の木をめぐる奇譚である。夭折した友の家族に招かれ、その家を訪れた主人公が、たまたま梅酒のゼ...

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幽の書評vol.8 恒川光太郎『秋の牢獄』

幽の書評vol.8 恒川光太郎『秋の牢獄』

ないもの、ありえないことを現出させる驚異の筆力。日本ホラー小説大賞作家が描くかくれざと三篇 恒川光太郎の最新作は、密度のある語りが楽しめる一冊だ。恒川は、短篇「夜市」によって第十二回日本ホラー小説大賞を受賞した作家である。本書は、受賞作を収録した同題短篇集と第一長篇の『雷の季節の終わりに』(ともに角川書店)に続く第三の著作ということになる。 『雷...

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幽の書評vol.7 森見登美彦『きつねのはなし』

幽の書評vol.7 森見登美彦『きつねのはなし』

人智を超えたものが蠢く、蜃気楼の街・京都。第二十回山本周五郎作家が世に問う、初の怪談小説集 森見登美彦は蜃気楼のような小説を書く作家である。蜃気楼は大蛤の見る夢だというが、森見の場合は、四畳半に独居する男の夢想が像を結んだものだと思われる。連作集『四畳半神話大系』(太田出版→角川文庫)収録の「八十日間四畳半一周」は、永遠に続く四畳半の中に男が閉じ込めら...

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幽の書評vol.6 エドワード・ゴーリー編『憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』

幽の書評vol.6 エドワード・ゴーリー編『憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』

その鏡は見る人の恐怖を増幅させる。奇想の作家エドワード・ゴーリーが選んだ選りすぐりの怪談集 その庭にはいくつもの石板が転がされている。形状から、それが単なる板ではなく石碑であることがわかる。禿頭の巨漢が、木陰に腰を下ろして休んでいる。もう一人の痩せた男が、立ったまま彼に話しかけている。二人の会話に耳をそばだてるような位置に、正面を見せて石碑が立っている...

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幽の書評vol.5 デイヴィッド・マレル『トーテム[完全版]』

幽の書評vol.5 デイヴィッド・マレル『トーテム[完全版]』

1970年代を代表するモダンホラー傑作が、「完全版」として甦る。現代版人狼伝説ここにあり 1970年代にデビューしたスティーヴン・キングと、彼に追随する作家たちが1980年代にモダンホラーの一大ムーブメントを作り上げた。デイヴィッド・マレル『トーテム』は、その潮流の中で書かれたホラー長篇である。作者自ら、キング『呪われた町』から受けた影響を認めている。...

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幽の書評vol.4 高橋克彦『弓削是雄全集 鬼』・柴田宵曲『妖異博物誌』『続妖異博物誌』

幽の書評vol.4 高橋克彦『弓削是雄全集 鬼』・柴田宵曲『妖異博物誌』『続妖異博物誌』

人の心の奥底に鬼の棲み処がある。安倍晴明以前に存在した陰陽師が活躍する王朝幻想小説の決定版 陰陽師というと、真っ先に名前が挙がるのが安倍晴明である。だが、晴明の名が史書に初めて登場したのは、961(天徳5)年のことにすぎない。 日本に初めて陰陽道が伝えられたのが6世紀初、空海によって「宿曜経」などの経典が日本に持ち帰られ、本格的な研究が開始された...

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幽の書評VOL.3 岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』・森山東『お見世出し』

幽の書評VOL.3 岩井志麻子『嫌な女を語る素敵な言葉』・森山東『お見世出し』

どこかで誰かがうまくやっている。顔の見えない存在へ募らせる憎悪が、現代人の心を荒ませている。 岩井志麻子の初期作品を読んで、これは日本固有の差別構造に立脚していると書いたことがある。デビュー短篇集『ぼっけぇ、きょうてぇ』以降の、いわゆる岡山ものとは、前近代的な村落共同体が、閉鎖社会であるがゆえに村落内部で生じた歪みを解消できず、かえって増幅させていく悲...

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幽の書評vol.2 つり人出版部編『水辺の怪談2』・小池真理子『夜は満ちる』

幽の書評vol.2 つり人出版部編『水辺の怪談2』・小池真理子『夜は満ちる』

先般、KADOKAWAから刊行されている日本で唯一の怪談専門文芸誌「幽」が休刊し、同社の妖怪専門誌「怪」と合併して「怪と幽」として再出発することが発表された。30号をもって幕を閉じた同誌には、私は創刊以来ずっと書評を寄稿していたのである。多くの雑誌で連載を持ってきたが、創刊から休刊まで通してというのはたぶん「幽」が初めてだ。思い入れの強い雑誌でもあり、これか...

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